北米のクラフトビールメーカーが「フライト」と呼んで提供する利き酒セットにヒントを得て、各フォントスタイルをビールの種類になぞらえ、それぞれをゲストデザイナーが個別にデザインしました。ビールの種類は、ビールの色がスタイルのウエイトに対応するようになっています。また直立スタイルは、ドライ仕上げのビールで表現されます。
「Stout」は、Joshua Darden が 2008 年にデザインした直立ボールドです。プロジェクトの最初のリリースであり、常に進化することを意図しています。何年にもわたる精力的なスケッチの結果、「Stout」は Matteo Bologna を満足させるデザインに仕上がり、発表に至りました (フォント名が、「ビール」のイタリア語であるのはそのためです)。
「Bruin」は、Elena Schneider が 2019 年にデザインしたミディアムイタリックです。「Blackletter」フォントのジャンルをアレンジして、ビール名の Oud Bruin (オールドブラウン) が持つ親しみやすいイメージを塗り替えました。活気に満ちたモダンなブラックレター体を使用し、直線で情熱を表現することで、親しみやすさをはるかに超えるデザインとなっています。Bruin ビールのような芳醇な味わいを加えるため、大文字と小文字はまったく同じ雰囲気ではありませんが、一緒に使用すると見事なハーモニーを奏でます。大文字は単独で使うとコントラストが際立ちます。
「Saison」は、Viktoriya Grabowska が 2020 年にデザインした細字イタリックで、機能よりも遊びの要素が強調されています。TDC 賞を受賞したこの革新的な細字スタイルは、ウエイトによる分類の枠を超越しています。エクストラブラックよりもスペースを取り、ヘアラインのように細いストロークを持つスタイルとはどのようなものでしょうか？「Saison」は、その名を冠したビールの濁ったボディと豊かな泡のように爽やかです。タイポグラフィの世界で最高のピクニックを楽しめるスタイルです。
「Lambic」は、Vera Evstafieva が 2020 年にデザインしたフォント。パブで一晩中踊り続け、次の日にはなんとか仕事に間に合うような雰囲気が表現されています。これは、アイルランドのカリグラファーである Denis Brown のワークショップにヒントを得た、ケルト文字とイタリック文字を実験的にハイブリッド化したものです。その結果、アイルランド、ドイツ、ベルギー (およびその他の国々) の風味を持ちつつ、中世ヨーロッパの痕跡を内在する汎ヨーロッパ的な文字が生まれました。
「Birra Pils」は、Mark De Winne がデザインした細字フォントで、フランスの見本帳に載っていた古い「lettrès ornée」を忠実に再現したものです。現在のフォルムでは、複雑な味わいをすべて伝え、わずかな軽さを与えるために、大幅に蒸留されています。骨格のフォルムは二日酔いを軽減しながらも派手さや風味はそのままに、大文字はさわやかな酸味を、小文字はほろ酔い気分を表現しています。豊富な絵文字がタイポグラフィの味覚をくすぐり、愉快な後味を残します。